春に二万本のつつじが見事に咲くことで知られる青梅・塩船観音寺。秋には境内に彼岸花が咲き、静かに鑑賞できる穴場スポットになります。見頃や歩き方、アクセス情報とともに、実際に訪れた様子を紹介します。
9月中旬頃から彼岸花の季節。
赤い絨毯のように一面を染める群生地は各地にあります。埼玉県日高市の「巾着田」などが有名です。彼岸花は、道路沿いや住宅街、公園、至る所で見ることができます。それでも群生している風景は格別。わざわざ足を運ぶ価値があります。
私は、人の多いのが苦手。できれば静かに花と向き合いたい。そう思い、青梅市にある塩船観音寺を訪れることにしました。

塩船観音寺とは
塩船観音寺は初めてです。迷うことなく駐車場に到着。午前九時半、車は一台も停まっていませんでした。一番乗り?定休日?不安になりながら境内へと足を踏み入れると、茅葺き屋根のお堂が見えて、その風情にテンションが上がりました。足元には、まだらに彼岸花が咲いていました。



「花と歴史の寺」と呼ばれる塩船観音寺は青梅市を代表する古刹。西暦650年頃の創設されました。仁王門や本堂は国の重要文化財に指定されています。境内では数々の文化財をがあります。樹齢千年を越えた杉木立に囲まれた癒しの空間です。春には斜面いっぱいにつつじが咲き誇り、境内が鮮やかに彩られます。写真やポスターでその華やかな姿を目にしたことがある人も多いことと思います。
観音堂に登る道のある大杉「両側にあるため、塩船観音の夫婦杉」と呼ばれています。東京都の指定天然金物です。



塩船観音寺の代名詞でもあるつつじは、花を終え、葉っぱだけが、まんまるに静かに並んでいました。その緑のコントラストも、なかなかにアート。
歩き進むと、「招福の鐘」があります。鐘撞 奉納料100円とありましたので、ちょいと突かせてもらいました。(午後4時から午前6時までは鐘撞禁止です)あまり大きく撞くと迷惑かしらとも思いましたが、ここはせっかくなので、力を入れて撞かせていただきましたよ。
ゴ〜ン。と大きいい音色が響わたり、胸の奥までジンジン響きました。ありがたいことです。



ちなみに鐘は二つあって、もうひとつは、茅葺の旧鐘楼。現羽村市の櫻沢市兵衛尉盛次が鋳造したもので、青梅市有形文化財です。現在は文化財保護のため打鐘を中止しています。

観音様の立つ高台に登ると、散歩中らしき男性が「ほら、あそこに富士山が見えるよ」と教えてくださいました。言われた方角に目をやると、かすかに富士山の姿が。思いがけない景色に「わ〜、ほんと、富士山だ」と声を出して喜んでいると、その男性は、「武甲山も見える」「丹沢の方の山や、伊豆半島伊豆の山も見えるんだよ」と、詳しく教えてくれました。きっと、その男性は、近くに住んでいて、毎日のように、ここを訪れているのではないかな。声をかけていただかなかったら、富士山を見逃すところでした。
教えていただき感謝。


遠回りして彼岸花のエリアに行こうと、観音様の裏を登ってみると、門が閉まっていました。門の前で戸惑っていると、門の向こう側にいる、女性が
「大丈夫よ、これは猪が入らないように閉めてあるだけ。通れるから、こっちに来て」
そう言って慣れた手つきで門を開けてくれました。女性は、ウォーキングの格好をして水筒だけを手にしていました。この女性もきっと、先ほどの男性と同じく近所の方で散歩中なんだろうな。と思いました。
「彼岸花を見に来たの?咲いているわよ。山の雰囲気を味わいたいなら上から回って。すぐに彼岸花を見たいのなら、少し戻ると降りる道があって、その先に一面に広がっているわよ」と丁寧に教えてくださった。
続け様に、思いがけず温かい心遣いに触れたことで、胸の奥まで嬉しさじんわり。花と出会う前から、すでに心が和らいでいました。
境内の道とハイキングコース

木々に囲まれた参道は、山道のようでちょっとしたハイキング。スニーカーで来てよかった。車椅子の母は連れて来れなかったなあと思いながら歩き進むと、看板発見。
どうやら、霞丘陵ハイキングコースの起点のようです。七石峠へ向かう看板がありました。行ってみたい気持ちが芽生えました。本格的なハイキングも楽しめるんですね。



木々の隙間から柔らかく差し込む木漏れ日が心地よいです。真夏の強い光とは違って、秋の訪れを感じさせてくれます。後ろを振り返ると誰の姿もなく、山をひとり占めしているようで、得した気分。
木々が伐採されていて手入れされていました。
キノコや苔を楽しみました。トンボもたくさん飛んでいました。
木々や草花を鑑賞しながら歩きます。私の好きな紫色の花「ハナトラノオ」が群生していました。私は、こういう趣が好きなんです。紫の清らかさが心を和ませてくれます。
彼岸花との出会い
山道を進んで下の方へ降りて行くと、木々の隙間から、遠くに、地面が赤く染まっているのが見えました。
「彼岸花、咲いている!」
一気テンションが上がります。急いで行こうとしましたが、私は、よく転んでしまうので、友人たちから、気をつけて歩くように口酸っぱく言われていることを思い出しました。「転ばないように、転ばないように」と口に出して言いながら、足元に注意して歩きました。



ようやく彼岸花エリアに到着。手前には黄色や白の彼岸花が混じっていました。ポップな感じ。その可愛らしさに思わず足を止めた。その先に広がるのは、赤の世界。太陽を浴びた花弁はラメを散りばめたように輝き、緑の地面に浮かび上がる。写真で見るのと太陽の下で実際に見るのとは大違い。
木のベンチに腰を下ろし、しばらく赤い絨毯を眺めた。遠くに一人カメラを構える男性の姿が見えた。静かな空間だ。虫の声を聞きながら大きく深呼吸し、花を愛でる静かな時間を堪能。

茶店でのひと休み
境内にはある茶店で休憩。お団子は三本からの注文。という表示を見て、三本は多いかなあと独り言。躊躇している様子を見てお店の方が声をかけてくださいました。「多かったらパックでお持ち帰りできるようにしますよ」そういうことなら、とお団子を三本注文。


その場で焼いてくれたので、焼けるのを待つ間、しばし、お店の方と歓談。
「昨日は結構混んでいたんだけど、今日は静かでラッキーでしたね」
「富士山はたまにしか見えないんですよ。見られて良かったですね」
焼きたてのお団子はもっちり柔くて美味しい。今日という日がますます特別な感じ。
気がつけば、お団子三本ペロッと平らげていました。
「お持ち帰りの心配することなかったですね」お互い笑顔。
見頃とおすすめの歩き方
今回(2025年9月24日)は、ちょうど七割ほどの咲き具合。満開の迫力にはまだ届かないけれど、蕾や咲きかけの花が混じる景色もまた味わい深いです。
例年の見頃は9月下旬から10月上旬。週末は混み合うことが多いので、静かに楽しむなら平日の朝が狙い目だと思います。
高台から群生を見渡すルートと、近道で赤の海に包まれるルートの二通りの楽しみ方ができるのも魅力です。時間と体力が許すのなら、ハイキングも兼ねて計画してはいかがでしょう。そろそろ山が赤く染まって来る頃ではないかしら。
それと、やはり、つつじの季節。4月上旬から5月上旬にかけて、20種2万本のつつじが花開きます。私もいつか行ってみたいです。
アクセス情報
- 住所:東京都青梅市塩船194
- 車:圏央道「青梅IC」から約10分。駐車場あり(普通車500円程度)。
- 公共交通:JR青梅線「河辺駅」からバスで約10分、「塩船観音入口」下車後、徒歩約10分。
- 周辺:春のつつじ、秋の彼岸花、霞丘陵ハイキングコースなど季節ごとに魅力あり。
旅のあとがき
花にたどり着くまでの、小さな出会いと、花の後のお団子が旅の時間をより豊かにしてくれました。
塩船観音寺を選んでよかった。今日のチョイスは大正解!
静かな場所を好む私には最高の時間でした。のどかな空の下で咲き誇る彼岸花。赤の絶景と、人の優しさや季節の空気を五感で感じられましたよ。
「また季節を変えて訪れたい」と思わせてくれる、そんなお寺でした。