北海道・十勝にある「幸福駅」は、かつて実際に使われていた旧国鉄広尾線の駅です。今は廃線となってしまいましたが、駅舎とホームはそのまま残され、観光スポットとして多くの人が訪れています。
昭和の時代、「愛国駅から幸福駅行きの切符」は縁起物として大人気となり、全国から注文が殺到しました。小さな紙切れに「幸福」の文字が印字された切符を手にするだけで、幸せが訪れるような気がしてしまいますものね。
私にとって幸福駅は、子どもの頃の思い出とつながる場所です。父が北海道出張のお土産に、「愛国から幸福へ」と書かれた切符を透明のキーホルダーに入れて買ってきてくれたことがありました。少し照れながらも、私はそのキーホルダーを大切にカバンにつけていました。いつの間にか失くしてしまったけれど、幸福駅という名前はずっと心に残っています。

廃線となった幸福駅
幸福駅があった広尾線は、帯広駅から広尾町までを結んでいた全長84kmの鉄道路線でした。十勝の開拓を支えた路線でしたが、自動車の普及とともに利用客が減少し、1987年に廃線。駅もなくなってしまうはずでしたが、名前の縁起の良さと全国的な人気もあり、地元の人々の手で保存されることになりました。
今では小さな駅舎とホームが残され、観光客が立ち寄るフォトスポットになっています。駅名標の前で写真を撮ったり、ホームに置かれた列車の展示を眺めたりしながら、訪れる人たちはそれぞれの「幸福」を見つめているようでした。オレンジ色の車両が2両。素朴なプラットホーム、木造の駅舎が、当時の趣を残し懐かしさを演出して展示されています。

駅舎を埋め尽くす「幸福切符」
駅舎に入ると、まず目に飛び込んでくるのは壁一面に貼られた「幸福切符」です。ピンク色の紙に願い事やメッセージが書かれ、それが何層にも重なって貼られていました。
「家族みんなが健康でありますように」
「夢が叶いますように」
「大切な人とずっと一緒に」
切符の数だけ物語があり、そこには人々の願いと祈りがぎっしり詰まっています。観光地でありながら、不思議と神社に参拝しているような静けさを感じるのは、訪れた人々の真剣な気持ちが場を満たしているからかもしれません。
私も壁に貼られた幸福切符を見つめながら、幼い日に父からもらった小さなキーホルダーを思い出しました。あのとき父は、どんな気持ちでお土産を選んでくれたのだろう。きっと「娘が喜ぶ顔を見たい」と思いながら買ってくれたに違いありません。


アクセスと行き方
幸福駅は、帯広市の郊外にあります。
- 帯広市中心部から車で約20分
- 帯広空港からは車で約10分
公共交通機関は少ないため、レンタカーで訪れるのがおすすめです。車を走らせていると、「幸福駅はこちら」と書かれた小さな標識が現れます。気をつけていなければ見逃してしまうほど控えめですが、そのさりげなさもまた旅の楽しさを引き立ててくれます。
駐車場も整備されており、気軽に立ち寄れるスポットです。短時間で見学できますが、駅舎の中で切符を眺めたり写真を撮ったりしていると、思いのほか時間を忘れてしまいますよ。
周辺スポット
幸福駅を訪れるなら、あわせて立ち寄りたいのが六花亭が運営する「六花の森」です。広大なガーデンには北海道の宿根草類などの草花が咲き、ギャラリーやレストランも併設されています。ここでしか食べられない限定スイーツもあるんですよ。六花亭のお菓子が好きな人には、特におすすめの場所。
その他近くには、中札内美術村や花畑牧場、十勝ならではのグルメ(豚丼やスイーツ)も近くにあり、幸福駅と組み合わせれば充実した小旅行になります。
旅のあとがき
「幸福駅」という名前を聞くだけで、心が温かくなるような気がします。

観光スポットとして訪れても楽しい場所ですが、私にとっては父との思い出をつないでくれる特別な駅でした。駅舎に貼られた無数の切符の中に、自分自身の思いも重ねることで、過去と現在がひとつにつながったように感じたのです。
幸福であるかどうかは、結局のところ自分の心の持ちようなのかもしれません。小さな駅で改めてそのことに気づかされました。
幼い日に父からもらったキーホルダー。なくしてしまったけれど、こうして本物の幸福駅にたどり着いたことで、その記憶は確かに生き続けているのだと思います。
北海道・十勝を訪れる機会があれば、ぜひ幸福駅へ。
そこで過ごすひとときが、きっとあなたにとっても小さな幸せのきっかけになるはずです。

幸福駅の想い出をエッセイに書いたよ。→記事はこちら