カタクリの群生している景色を求めて、
神奈川県相模原市にある「城山カタクリの里」へ向かった。
朝9時。駐車場はすでに満車に近く、受付にはたくさんの人が集まっていた。
春を待っていたのは、私だけではないらしい。
駐車場から受付へ向かう途中、個人のお宅の敷地を通る。
そこには、野菜やお土産が並ぶ小さな直売コーナーがあった。
帰りに立ち寄ろうと思いながら、そのまま通り過ぎる。
受付で500円を支払うと、入場券はしおりになっていた。
大事に使おうと思い、折れないようにと、
手帳に挟んでバッグに入れたのだけど、少しはみ出てしまった。
バッグの中で、どうか無事でいてほしいと願った。
「城山かたくりの里」は、神奈川県花の名所100選に選ばれている。
約30万株のカタクリが自生する場所だという。
そして驚いたのは、ここが個人所有の山林だということだった。
おそらく、先ほど通った個人のお宅の主だろう。
カタクリは、種から花を咲かせるまでに7〜8年かかる。
分球するとしても年数がかかる。
その年月を思うと、この景色は、
ただ自然にあるものではなく、長い時間と手間の積み重ねの上にあるのだと感じた。
入口には車椅子の貸し出しの案内があった。
一瞬、母も連れて来てあげればよかったかも、と思う。
けれど、目の前の道は”山の道”だった。
私には、この道を押して歩くことは難しそうだ。
そのことを、静かに受け止める。
園に入ると、すぐにカメラマンたちの人だかりが渋滞。
皆、思い思いの場所で、春を切り取っている。
その足元で、カタクリが咲いていた。
「今年も、咲いたよ」
そう言っているかのように、光の中で小さく身を伸ばしている。
クルンとカールした花びらがどこか誇らしげにも見えた。
白いカタクリを見ることができると、ラッキーなのだという声が聞こえてきた。
入口近くに、一輪だけ咲いていて、見つけられたことに、ひとり微笑む。
この山には、カタクリだけでなく、春の花木があちこちに咲いていた。
それぞれが、それぞれの春を知らせているようだった。
少しだけ歩いて、少しだけ立ち止まり
ゆっくりと春の中を進んでいく。
人の手で守られてきたこの山の春に、自分もそっと迎え入れてもらっているような気がした。





足元で咲いていた、あの小さな花のことをもう少しだけ