毎年、家族で山梨県勝沼にあるぶどう園を訪れる。
今年は暑さが厳しかったので「涼しくなったら行こう」と言っているうちに、気づけば9月も半ばを過ぎてしまった。
以前は、ぶどう狩りを楽しんだ。今はそんなにたくさん食べられないし、母も車椅子なので、ぶどう園まで行って雰囲気を味わい、ぶどうを買って帰るのが習慣になっている。
以前は「勝沼のぶどう郷に行く」ことを目的に出掛け、現地で雰囲気の良さそうな園を選んで入っていた。
けれど今は、毎年訪れる園が決まっている。
その園に初めて立ち寄った時、試食のぶどうを出してくれた。
シャインマスカットをはじめ、3種類の品種が並んでいた。一口食べると、実はパンパンに張っていて、果汁がこぼれるように口いっぱいに広がった。食べ比べると、それぞれに個性のある味わいがはっきりと感じられた。母と姉、そして私。三人は顔を見合わせて目を大きく見開いた。「美味しい!」――こんなにおいしいぶどうは初めてだと驚いた。知り合いに送ったところ、みんなも同じように驚き、「すごく美味しい」と喜んでくれたのが、また嬉しかった。
その園からは、ぶどうの季節が始まる頃に、やさしいイラストが描かれた葉書が届く。葉書を持って行くと小さなお土産をいただけるので、毎年「今年もあのぶどう園に行こうね」と葉書を手に出かけるのが恒例になった。
いつ行っても、おいしいけれど、やはり初めて口にしたあの時の味が一番忘れられない。驚きと感動のあの一粒を思い出しながら、今年もまた同じ場所を訪れた。