絶景の裏にあるもうひとつの絶景

花の絶景シーズン到来。

今年も花の絶景を楽しむシーズンがやってきた。青い空の下で美しい花々を眺めるのは、この上ない幸せ。心を和ませてくれる。

一輪でも美しいけれど、群生している花々が地面を覆い尽くす光景は、圧巻。

「見に来てよかった」そんなふうに思う。誰もが笑顔になる。

私は、花の“オンシーズン”を見るのと同じくらい、“オフシーズンの景色”にも惹かれる。

華やかな季節は、どこを見てもきらきらと輝いている。でも、オフシーズンの景色には、携わる人たちの想いが静かに滲み出ているから。

植木職人さん、土づくりのプロ、観光企画の人たち……。職種は違っても、華やかな世界を築くために、誰もが、たくさんの人に美しい花を見てもらいたいと苦労を重ねている。


あしかがフラワーパークの大藤

栃木県足利市にある植物園『あしかがフラワーパーク』には、世界的にも有名な大きな藤の木がある。

見頃は4月末から5月末。

たった一本の樹が、周囲を別世界へと誘ってくれる。

藤の花にすっぽりと包まれ、深呼吸すると、甘い香りが心まで癒してくれる。

あしかがフラワーパークは、年間来場者数150万人を超える人気スポット。

その多くは、藤の季節に集中している。2024年、NHKのニュースによれば、ゴールデンウィークを含む10日間で約33万人が訪れたという。


冬の足利フラワーパークで見たもの

ある冬の日、私は足利パークの近くに用事があり、せっかくだからと立ち寄った。

さすがに藤のオンシーズンほどの賑わいはなかったが、そこそこ人が入っていた。

冬はイルミネーションが人気のようだ。

バラや牡丹も咲いている。

入口で入場料を払い、チケットを手にしたとき、正直、あまり期待はしていなかった。

しかし、それはすぐに間違いだったと気づかされた。

裸ん坊になった大藤が、ズシンと重たく訴えかけてきた。

長く続く茶色い枝が、力強い。これが大藤。

樹齢150年の生命力に圧倒されて、しばらく動けなかった。

目を閉じ、満開の藤を想像する。

たった一本の樹が、あれほどまでの絶景をつくり出すのか……。

感動が止まらなかった。いつまでも、そこに立っていたかった。

園内では、職人さんたちが剪定や手入れに忙しそうに動いていた。邪魔にならないように気をつけながら、全体をゆっくりと園内を鑑賞して歩いた。

最後に、もう一度、大藤の前へ。

「頑張ってね。ありがとう」

そう声をかけて、あしかがフラワーパークを後にした。


オフシーズンが教えてくれること

花の景色は、花開いているときだけがすべてではない。

携わる人たちの想い、植物たちが自ら生きる力を蓄えている時間──。

オフシーズンは、表向きには静かな舞台裏のように見えるかもしれない。

けれど、そこにも確かに、物語が流れている。

寒さに耐え、枝先を空に伸ばしながら、次の季節を待ちわびる植物たち。その傍らで、黙々と手をかけ続ける人たち。その姿を目にして、オンシーズンとは違う、深い感動が胸に広がった。

わざわざ、オフシーズンに足を運ぶことの意味。

オンシーズンに見る景色は、きっとそんな積み重ねを知ったうえで、いっそう鮮やかに、胸に響くに違いない。だからこそ、オフシーズンに触れる景色を、私はこれからも大切にしていきたい。

足利フラワーパークの大藤説明札

誰も気づかない冬の日も、物語は続いている。